てるてる編・其の一

そもそも“てるてる”というキャラは「オフ会晴天祈願」に生み出されたものです。
私が作ったキャラじゃないのも居たりします。(紺とか赤とか)
でも、一寸した思いつきから話を作ってしまいました。
例えば空気のように、目に見ないけど凄く重要なもの、今作における“てるてる”はそんな役柄です。
なくてはならないものです。人間は知らないけれど、外から世界を護ってくれているのです。
拙い解説はここまでにして、とにかく読んで貰えたなら幸いです。




ボクを呼び起こしたのは絶望。
呼んだのは・・・・・・・君?

ならばボクは、君の為に力を使おう。そうして世界に終わりをもたらそう。
辛いことより苦しいことより除け者にされるのがいちばん悲しいって分からせてやろう。
さぁ、ボクの名前を呼んでおくれ。そこに行くから。

早く早く早く。


記憶の闇

(あれは――――何だ?)
見たことはないのに知っている、そんな気がした。

光の中で、少女は笑っていた。

あどけない、神に祝福された子供のような笑みを浮かべている。
(だが・・・・・・この不快感は)異様な感じがする。
ブラックは原因を探ろうとした。

その瞬間、少女と目があった。

見る者を捕らえて離さない、ここではない何処かへ吸い込まれそうな翡翠の瞳。
「キミも閉ざしてやる」少女がそう言って笑った刹那、ブラックの意識は闇へ墜ちた。

                                    

黒雲の糸

混濁とした意識が徐々に目覚めつつある。
(・・・・今まで・・・何してたっけ・・・・?)
疑問が浮かび、彼女はまぶたを開いた。
状況の確認ができない。
(暗いな)
その上、身動きも取れない。全身に何かがまとわりついている。
まるで蜘蛛の巣に囚われた虫のようだ。
「あんま良い気分じゃねぇな」
声に出してみる。ちゃんと喋れた。
「だからってどうなる訳でも無いっちゃそうだが」
一人、呟きながら上を見上げる。やはり、同様に暗いが―――――
なにかが見える。
(あれはなんだ?)
人、のようである。自分と共に居たとすればただ一人。
「おい、起きろ“緑”」
呼びかける。
しかし、まだ眠っているらしくぴくりとも動かない。
「おい」
・・・動かない。
「起きろってば!」だんだんイライラしてきた。
「聞いてんのか、このノッポ!でくのぼう!貧乳っ!」
ほとんど叫びに近い音量で言ってみたが微動だにしない。

「えぇい、目を覚ましやがれっ“Grune”!」

言われて少女は弾かれたように目を覚ました。
「ひっ、ひとのこと貧乳呼ばわりしないで下さいっ!」それでいいのか第一声。
「うっせーぞエン。今は乳の話してる場合じゃねぇ」
「ブラックさんが先に言ったんじゃないですかぁ!」
「・・・・って、なんですかこの状況!?」遅い。
「んなもん、オレが知るか。そもそも何処なんだよここ」
「どこですかねぇ。私達、なんで囚われてるんでしょうか?」そう、囚われている。
「捕縛されてる、って言った方が正しいのかもな。閉ざされてる・・・・とか」
ふと異様な気配を察知して、ブラックは顔を上げた。
瞬間、全身に震えが走った。
「馬鹿なッ!」
眼前、いや頭上にある黒い影は、侵入者の道を阻む為の存在。
「これってもしかして・・・」
「システムが、書き換えられているだとッ!?」
どこの馬鹿の仕業か、今ブラックと緑は“外敵”とみなされているのである。
この世界を守護する立場にある私達が。何故?
いやそれよりも・・・このシステムを作り出した知恵者は言っていたではないか。
『侵入者は捕らえられた後処分される』と。
(だとしたら―――――)
一刻も早くここから逃げなければ、この世界から排除されてしまう。
「ちっとばかり、力わざで行くぞエンっ!!」ブラックは、その手に雷を呼び寄せた。
光が爆ぜ、あたりの闇は一時だけはらわれた。

                    

地上に住む者

楽園には暗雲が立ちこめ、セミ=ブレヴィスでは日照りが続いた。
ラメンテの砂漠には雪が降り、秋であるはずの東国では桜が咲いている。
冬の国に夏が来て、空を渡る鳥も、海を泳ぐ魚も、
そしてもちろん大地に住む人々も大いに混乱していた。

もはや、異常気象などという可愛いレベルの話ではない。

「陽がお隠れになったか・・・・」グラーヴェは暗雲立ちこめる空を見上げて呟いた。
原因ははっきりしている。聖地の灯が消えたからだ。
あれは神の存在を示す灯だ。燃え続ける限り世界は永久に守られる。
季節は順に巡り、程よく雨は降る。これまで変わる事がなかった正常な流れ。
その当然である筈の秩序が乱れてしまった――――つまり、世界の崩壊。
地上でこうなのだ。では、高き所に住まう者達はどうなのか。
「せめても、無事であれば良いのだが」かつて一度だけ目にした“精霊”・・・

人外の力を操る黒髪の少女の無事を、老いた占い師は思った。

                   

虚無の白

顔を付き合わせた全員が深刻な表情をしていた。
「えぇーと、な、何なのかなぁこの状況は!?」まず口を開いたのはショートの黒髪。
「私たち・・・・地上に居ましたよね」次いで、ロングの赤髪。
「どうしてこんな、何もない空間に集まってるのかしら?」
腕を組みをした少女が紫の髪をなびかせながら呟く。
「つーか、春夏秋冬が揃うの久しぶりやねぇ」
呑気な声を上げたのは青髪を後ろで縛った少女。
「そういやそうねぇ、久々だわ―――――って」ふと、重大な事に気付く。
「待って!私達がココに居るってことは、今地上は一体どうなってるの?」
季節と天気が消え失せた。

「むしろココはどこなのぉ?」
「まさか、このまま脱出できないんでしょうか・・・・」いきなり焦り始める面々。
「ちょいと落ち着き。焦ってもしょーがないやろ」全員を制したのは青髪の少女。
髪をかきあげながら続ける。
「とりあえず、思い当たるフシを挙げてみようや」
「思い当たるフシったってー、毎日真面目に働いてるよぉ〜?日照りの所に雨降らせたり、台風呼んだり」
ふてくされたように黒髪。
「そもそも、普通の人間の方々には私達の姿は見えませんし・・・・」
困ったように赤髪も続ける。要するに、人間の仕業であるはずは無いのだ。

「フレデリカ、じゃないの?」ポツリと、呟いたのは紫だ。
「気付いてた?何日か前から聖地の灯の気配が薄まっていたのを」皆に問いかける。
溜息をつきながら青髪が言う。
「やっぱ気のせいじゃなかったか。変な感じがしてたんよなぁ」
「でもさ、そんな簡単に消えるものじゃ無いよねぇ。聖域に護られた灯なんだからさ」
「聖域の民が外部の者の進入を許すとも思えません」
灯を護る、という使命を帯びている為エレヴァートの民は、それ故に余所者を嫌う。
「ぅん・・・それはそうなんだろうけどさ。
 あれはさぁ、イレギュラーな存在なんだよね。この世界において」
「あれって、フレデリカのこと?」
「そ。ありゃ招かれざる客やからねぇ」
「もっと身も蓋もなく言うと、ただの侵入者だわ」
除外されるべきもの。あってはならない存在。

「許されないものが地上にのさばってるっていうのは、どういう事なんだろー?」
「むしろ私達が世界から弾かれてしまったんでしょうか。
 誰かが聖域を乗っ取ったせいで」
まっさかぁ。と誰もが思った。それはありえない話だ。
何処の酔狂がやるのだそんな事?
よほど無知なヤツか世界に怨みを持っている奴でなければ・・・・・
「も、もしかして・・・・・」
その両方だったりするのでは、と全員が思いついた瞬間、異変が起きた。

                     

豪雷と聖風

ドオォン、という轟音と共に何もない空間に突如現れたのは、彼女等の見知った顔だった。
思わず黒は声をあげた。
「ブラックにグリーン!!どしたのそれっ!?」
みると、ブラックと呼ばれた黒髪の少女の腕からは血がどくどくと流れ落ちている。
「ねぇ・・・・地上で何が起きてるの?」
紫は問いかけた。
管轄は違うがブラック達もまた、本来なら地上を統べる者である。
「んなこと、オレが知るか。気付けばわけわかんねー所に居て、エンと一緒に
どうにかぶち破って逃げてきたけど・・・・」
「喋っちゃ駄目ですブラックさんっ!」
グリーンは半泣きになっていたが、それでも懸命に治癒の術を使っていた。
「どうなってるんかね、こりゃあ・・・・」ざわざわと、奇妙な感覚が広がっていくのを感じる。
取り敢えず今は、ブラックの傷を癒えるのを待つしか無さそうだ。

暫くしてから、ブラックは語り出した。
「まず一番に言っとくと、防衛システムに謎のエラーが出てる」
「ええっ?」
「防衛システムってさ、アレでしょ?知恵者がウィルスに対抗して作ったヤツ」
「あの切れ者が作ったシステムにエラーが?」
「オレとエンは捕らえられたんだよ。実際に・・・」
「貴女達、よく抜け出せましたわね」腕の怪我の理由が分かった気がした。
「原因は、何なのかねぇ」
「あの・・・・・・信じられないと思うんですけど・・・」
「何?」

「あいつだよ。 雹――――封印されし“白”」

その名を聞いて、四季たちの顔つきが変わった。
「嘘でしょ?なんで永久凍結・・・・破棄された者が出てくるのよ」
「ふ・・・封印、解けちゃったの?」
問いに答えるように、グリーンが仮説を口にする。
「たぶん、侵入者と波長が合ったんです。だから起きちゃったんだと思います」

                     
 

ヒョウの望み

ブラックが呼び寄せた雷は、どうにかシステムを破るに至った。
二人が脱出をどうするか考えていた時に、そいつは現れた。
雹。失われた色“白”を司る者。
「なんだ、もう抜けちゃったの?つまんないなぁ」少女は笑っていた。
「何故こんな所に居る、雹ッ!!」
「嬉しくなるぐらいお約束な反応だねブラック。ボクを呼んだのは絶望」
「ぜつぼう・・・・?」「誰のものかは知らないけどね。今から会いに行こうと思ってるんだ」
「なに言ってんだ?太陽が存在する限り、テメェは地上へ降りれない筈だ」
「太陽が『存在する限り』は、ね・・・」

「どういう、事ですか」
「言葉通りの意味だよ“風”のおねぇさん」人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
「陽を閉ざしたのか!?自分が何をしたか、分かってんのか“雹”っ!!」
「その呼び方止めてくんないかなぁ“雷”の人」
「色すら与えなかった出来損ないが、たわけた事を言うな」
「・・・・五月蠅いよお前。」突然、少女の顔から笑みが消えた。
いや、表情そのものが欠落したかのように、消えて無くなってしまった。
声の調子までガラリと変わっている。
「全てを奪ったお前らから全部奪ってやるよ。取り敢えずこの相方さんからかなぁ?」
言うなり、グリーンに黒い影が襲いかかった。
「させるかっ!」
ブラックはグリーンをかばい、腕で力任せに無理矢理影を断ち切った。
「愚かだねぇ。護る事でしか意義を確立出来ないなんて。護られることでしか生きていけないなんて」
「テメェに、何が分かるってんだ・・・・」
「ブラックさん、血がっ!!」
「所詮は封印されてた身だからね。何も分からないよ?
 ただ一つだけ分かってるのは――――」
少女は薄い笑みをたたえて。

「この世界を壊したいってことだけかな」

呪いの言葉を言い残し、消えた。

                     

鍵はどこにある?

「なんとか皆の波動を探して座標転換したんですけど・・・・これって、どういう状況なんですか?」
「分からないんだよねー」
「ぶっちゃけ、私達もかなり困ってるのよ」
などと言いつつどこか緊迫感の足りない面々であった。
「取り敢えず、さっきの話を総合すると、雹がフレデリカと手を組むかも、って話なのかしら」
「つーかさ、リーダーは本当に閉ざされてるワケ?」
「何の応答もねぇから意外とマジなのかもなぁ」
「陽が隠れらとなると、皆困るやろうなー」
「ど、どうしましょう・・・?」
「どうするべきかね」ふと気付いた。
「システムの誤認でここに集められてんのかも」
「あっ、そうかも」「青ちゃんかしこーい」
「・・・って事はつまり、異常を直せば?」元に戻れるのではないか。
「でも、直しようが無い、ですよね?」

          しーん。

グリーンの放った的確なツッコミにより、痛々しい間が開いてしまった。
「んー、外に連絡が取れればいいんだけどなぁ」
「そう上手くはいかないものですわねぇ・・・・」
赤が溜息をついたその時、どこからか声が聞こえた。
『そうさ、誰も名前なんか呼んでくれないよ?
 そもそもが関与しちゃいけない世界の話なんだしさぁ』
「雹!?」
「どこにいるのよぅ!?」「姿見せないなんて卑怯だぞっ」
『そのままずっと、世界の滅び行く様を眺めていると良いよ』
「うっせぇな!」
『君達に出来ることなんか何も無い』
ひどく不吉な予言であり暗示であり、事実であった。
その場にいた者全てがどうしようもない無力感を感じた。
声はそれきり途絶えた。
「うちらは、完全にかやの外なワケ・・・・?」黒はふて腐れた。
「ねぇブラック、妙に大人しいけどうしたの?」
紫が話しかけたが、ブラックはうわの空だった。どこか違う所を見ている。
いや、正確には。
違うものが見えていた。

誰かと誰かが戦っている光景。だがこの魂には覚えがある。
「もう、忘れちまったのか・・・・・?あんなに、いつでも側にいたのに」
呼んでくれ、名前を。
 (そうだ。重要なのは“名前”だ)
この世界の滅びなど見たくはない。
お願いだから思い出してくれ、終戦と共に封印された真の名を。



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