その全ての始まりは、いつもと同じ荒れ果てた夜。
ただ一つだけ違ったのは・・・・彼等が希望を捨てなかった事である。
その頃、ちゆ板は荒れていた。
連日連夜送られてくる羊羹、羊羹、また羊羹・・・・瞬く間にスレは流れて行き、後には荒らしの傷跡が残るばかり。
逆にこの状況を楽しむ者、しばらく来ないと別れを告げる者、様々な反応を示す住人達だったが、
ほとんどの住人は避難板に逃げ込み、羊羹の襲撃が止むのをひたすら待っていた。
しかし、まだ若干名の住人がちゆ板に残っていた。
住人A「・・・・・止まないな」
住人B「いい加減飽きないのかねぇw何処の暇人が馬鹿やってんだか」
住人C「公式アナウンスも流れんしなぁ〜。管理側は気付いて無いんかね?」
住人D「というか、我々も避難した方が良いと思うんですけど・・・・」
住人B「ん、もっともな意見だねぇ。この速さなら何でも言えるけどそろそろ逃げとくべきさね」
住人C「っても、避難板のアド知らん奴らが困るっしょ。元々俺等はそのために残っとるんやし」
住人A「そうだな。だから、もう少しここに居よう。だが・・・・ただ待ってるだけじゃ事態は動かないんだ。
どうだ、ここは一つ手を打ってみないか」
住人D「手を打つ・・・って、何をするんですか?」
住人B「アレか、召還しようってわけか」
住人C「そうさねぇ。この危機を回避するには、やっぱり管理側に来てもらわにゃ」
住人A「何も起きないかもしれない。だが前例があったのだから、やってみる価値はあると思わないか」
住人D「あるいは、皆の心を一つにすれば、降臨して下さるかもしれないですしね。
それじゃ やってみましょうか」
誰もがそれを本心から信じていた訳では無かった。だが、この状況における最後の希望であった。
皆この事態から抜け出す為には、そうする以外に方法が無い様に感じていた。
だからなるべく、心を込めてキーを打った。哀願するように。
文字数はたった4文字。
その時板に残っていた全ての者が、その“呪文”を打った!!
キ テ ハ ー ! ! ! ! !
とたんに、ディスプレイから白い光があふれ出す。思わず目を被いたくなる程の眩しさ。
(畜生、フリーズしたかっ!?一体何が起こっている?)
自分の判断は間違っていたのかと、既に後悔しつつも住人Aは画面から目を離せなかった。
そして、見た。
画面の向こう側に、翼と輪っかを持つピンクの髪の小さな女の子を。
(ま・・・・まさかあれが、永遠の12歳にして全てのVNIの祖、敬愛と畏怖の念を込めて「2次元の神」と呼ばれる・・・・)
今はもう、消えてしまった“ちゆ”の映っていた画面を呆然とした顔で見つめる。
その口元が、思わず緩んだ。(避難板で皆に確認を取ろう。電子の妖精を見たか、と)
そうして住人Aはパソコンを再起動させた。真夜中過ぎの、出来事だった。
同じ頃、長らく板を留守にしていた管理人は、板の入り口に「メンテナンス中」の札を立てかけた。
右も左も羊羹だらけのちゆ板を、暗澹とした気持ちで眺める。
「暫く電脳空間を留守にしていただけなのに・・・・許さないですよ、荒らし大王フレデリカ!」
メンテナンスと言う名の、戦いが始まる。