「諦めな。俺達の前にはもう・・・・絶望しか、残されてないのさ」

                             寂れた街の一角で。




<第1話  降りし希望の翼>


その世界は、何もかもが汚染されていた。山も川も森も海も。風は吹かず、日照りは容赦無く続き
・・・・・そして人々は、争っていた。
生きていく為に。食料を奪い合い、少しでも汚染の少ない土地を手にするため戦い、朽ちていった。
  それら全ては、黒き悪魔―「羊羹」による汚染のせいなのか。誰がこの絶望的状態を招いたのか。
帝都は敵の手に墜ち、戦乱と混乱が続き、人々の心は荒んでいった。
世界は明らかに、破滅の道を歩んでいる。
これは、そんな最中に始まった物語。

とある街角で、旅人は占い師に尋ねた。
「この無益な戦いは・・・いつまで続くのだ?」
占い師の老婆は顔を上げる。「お主は、この世界で誰が一番悪いかを知っておるようじゃのぉ」
「当前だ」旅人の目が怒りに燃える。占い師は、そこに強い復讐心を感じ取った。
「あいつが・・・・あの下郎がこの世界を蝕んでいるんだ・・・荒らし大王フレデリカ!!」
占い師がどこからか水晶玉を取り出した。それを小さな木の台の上に置く。
「そうじゃな。だが、奴は強い」
今まで数多くの者が奴に挑んだが、誰も敵わなかったのだ。
「知っているさ。俺だってあいつに・・・・」
そこまで言って、旅人は口を閉ざした。
己の身に起きた事実を認めたく無いかの様に。

 「負けたんだ」

吐き捨てるように、旅人は小さく言った。そう、まるで歯が立たなかったのだ。
 彼は覚えていた。故郷の村を襲った悲劇を。
唯一の肉親である妹の冷たくなった体を、両腕で抱きしめた事を。
「・・・・見たところ、お主も弱くは無さそうじゃがな」占い師が旅人を見定めながら呟く。
「だけど強くも無いって訳だ・・・・」
護れなかった。何一つ。その敵を討つ事すら、自分には出来なかった。
「まぁそう自分を責めるでない。お主はまだ若い。限界を決めつけるには早いじゃろう。
 どれ・・・占ってみるとしよう」
占い師が水晶玉に手をかざす。

(そうじゃな・・・・わしも知りたい)

この危機を、止められる者が居るのかを。あるいは、世界が滅ぶまで終わりは来ないのかを。

「むっ!?」 かざした手の平に何か、力を感じた。
「何か見えたのか?」と問おうとしたが、旅人もまた変化に気付いた。
 水晶玉が―――――――輝いている。
それは白く、煌々と。まるで“希望”をこの世に具現化した様な、輝き。
「こ、これは・・・・?」
「わしらは運がよいのぉ。どうやら救世主はこの世界に、来てくれたようじゃ」
占い師の顔が緩んだ。「神が降臨しなすったか。これで・・・・あるいは・・・」

(この戦いが、終わるかもしれんのぅ)

 それはまだ、仮定に過ぎない事だった。だからあえて・・・口に出さずにいた。
そんな占い師の横で、旅人は何かが始まりつつあるのを感じていた。

  そう、賽は投げられた。

ザシッ、音を立てて大地を踏みしめる。ここは荒れ果てた荒野だ。
さながら、この世界の現状を伺わせる様な。
 「さて、ちゆが来たからには、もう好きにはさせません!!首を洗って待ってなさい、フレデリカ!」
・・・・・斯くて救いの主は、この地に降り立つ。

羊羹に汚染された・・・・この世界で。 誰もが希望を失いし、この世界で・・・・

立ち向かおうとする者達の戦いが今――――幕を開ける。




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