そもそもこの連中はなぜ、こんなくだらない場所に群がるのだろう。
彼には全く分からなかった。
荒らして、荒らして、荒らして、荒らして、荒らして
――――――「安全で快適」なんて幻想だ、と教えてやろう。
時々聞こえてくるのは、
どうにもならない物に対する憤り、歯痒さ、もどかしさ。力を嘆く声、不満。
彼は気分が良かった。
その全てを自分が作り出している、という現実に恍惚の笑みを浮かべた。
こいつらはどうせ、真に自分を傷付けることが出来ない。
ネットにおける最大最高の優位性だ。
逃げ惑え、苦しめ。仮想なんて、容易く崩れるんだ。
これは幻想だ。
これは虚空だ。
これは嘘だ。
これはまやかしだ。
これは混沌だ。
そしてこれは―――――――
「悪夢」そのものだ。
そうじゃないのか。
だからこそ人は夢中になるのだ。群がるのだ。
現実でも仮想現実でも同じ事。
いつだって繋がりを求めている。
それならば、つながれなかった奴はどこにいけばいいんだ?
この世界にすら拒絶されたらどうすればいい。
どうすればいいんだ?
電脳の向こうには幻想がある。
この世界に助けが来ることは絶対に無いのだ。
確信や理由がある訳でないのに、彼は思い込んでいた。
先のことなど、もうどうでもいい。
ずっとこの悪夢を演出していたい。
もっと多くの人が、この世界の人もそうでない奴等も
画面の向こうで困ればいい。苦しめばいい。それだけだった。
だが、予想していなかった事が起こった。
神を殺すはずの“完全兵器”が、創造主の姿を完全なものにした。
あと少しでこの世界の神になれるはずだったのに。
「・・・・・・わかりました」
影の言葉に、創造主は応える。白い牌を構える。
チュンチュンが發を頭上に掲げた。
動くという行為を忘れたかのように、他の要はそれを見守っていた。
「でりゃああぁあああ!」
額の中の字が光った。
そしてフレデリカに向かって投げられた發の字も発光している。
最後に創造主が、小さな白い牌を投げた。
まるで煙幕に覆われたように、部屋中が真っ白になる。
「消えなさい、異なる世界から来たものよ」
頭上の黄金の輪を、創造主がフレデリカに向けた。
その輪はまるで鏡のように光り――――現実世界の自分を映し出していた。
「うわぁああぁあああぁああああっ!?」
やめろ。
見せるんじゃないそんなもの!
それはもはや僕じゃない。
違う。
僕は神に成り代わるんだ。
資格があったからこちらに来た――
「この地を乱したものに、神罰を下します」
輪が黄金の輝きを放ち、フレデリカへ向かってくる。
「お前も死ぬんだぞ!?放せ、はなせぇええっ」
影に向かって叫ぶが、その黒い手が力を緩めることはない。
彼等はチュンチュン、發、白が作り出す三角形に包囲されている。
どこにも逃れることはできない。
「八つ裂き光輪……!」
金の輪が、フレデリカの体を貫いた。
王の間に、絶叫が響いた。
だがその声すらも、光の中に掻き消されていく。
神に成り代わろうとしたものの、哀れな末路だった。
自分へ向かってくる、強大な力を前に、影は安堵していた。
――――このろくでもない人生が、ようやく終わる。
「ちゆは……を…………」
神が使った、最後の言霊。
影の耳には届かない。
(いらねぇよ、もう何も)
全てが光の中に溶けていく。
ようやく長い旅は終わった。彼は、嬉しかった。
この身を滅ぼすものが、確かに存在したのだ。
彼が掴んでいた存在がバラバラになって消えていく。
そして影もまた、光にのみ込まれた。
意識がどこか遠くへ消えていく。
白い光が弾けて消えるのが見えた。
輝きの果てには、何があるのだろうか?