「それは弱きである」という、我らの油断
それこそが―――――
全てを崩す、始まりだった。
その頃、ネコミミは一人で森の中を歩いていた。
街には居られない、理由があったからだ。
「ったく、世も末だねぇ・・・」何もかもが、酷く厄介でこんがらかっている。
もう少し楽に生きられないものか?
そんな事を考えながら、一人アテもなく歩いていた。 すると・・・・・
ぱぁん、ぱぁん!
「何だい!?」反射的に、ネコミミは顔を上げた。
被っていたフードを払いのけ、耳をすます。そう遠くない何処かから、再び乾いた銃声が聞こえた。
この辺りに集落は皆無・・・・・だからこそ、自分はここに居るのだ。
そして狩人もわざわざこんな辺境の森の奥まで来るとは思えない。
となると。
「誰か戦ってるにせよ・・・行くしか無いさね」
世界は今、荒れに荒れている。しかし、こんな世の中だからと言って、非情になる事など出来はしない。
命の取り合いを見逃すことなど出来ない。彼女は、そういう性格だった。
・・・それに、もしかしたら「ちゆ」かもしれない。彼女がついに、この世界に降りて来たのかもしれない。
だとしたら。 「放っとけない、ねぇ」そう呟いて、全身を覆っていた布を脱ぎ捨て体を軽くする。
そしてネコミミは走り出した。音のした方へ。森の奥深くへと。
一方、ちゆときゅーちゃんは突然現れた17才の攻撃から逃れるべく、森の中を全力で駆けていた。
ちゆが呪文を唱えるには、わずかばかりの集中力と呪文を詠唱する為の時間が必要だった。
しかし、容赦なく次から次へ放たれる銃弾は、詠唱する隙すら与えてくれない。
(攻撃は最大の防御という訳ですか・・・・だけど、何故アイコンがちゆを襲うのでしょう?)
何かが歪んでいる。目には見えないが、確かな奇妙さが有る。
この世界は「羊羹」に・・・・・あんなに、弱いものに?
いいや、そもそもそれが間違いだとしたら?きゅーちゃんを抱え、走りながら必死に考える。
羊羹には自分がまだ知らない、何らかの要素があるのでは無いか?
ちゆは、羊羹と戦った時の事を思い出してみた。だが、羊羹は「羊羹」でしか無かった。
―――そう、敵は本当に「ただの羊羹」だった。
意志らしきモノを持ち、動く事を除けば。
その気になれば食べる事も出来る様だし、放っておいても別に無害な存在である気さえする。
しかし。げに恐ろしきは・・・・
(まさか、あれが“汚染”!?)
木々の間を縫うように逃げ惑いながら、ちゆは気付いた。
この世界は、羊羹に汚染されている。即ち、そこに住む人々もまた・・・汚染されているのでは無いか、と。
あの一見ひ弱そうな、不気味に動く羊羹に。