「それは弱きである」という、我らの油断
 それこそが―――――

全てを崩す、始まりだった。





<第4話 響く銃声、疑惑の羊羹>


その頃、ネコミミは一人で森の中を歩いていた。
街には居られない、理由があったからだ。
「ったく、世も末だねぇ・・・」何もかもが、酷く厄介でこんがらかっている。
もう少し楽に生きられないものか?
そんな事を考えながら、一人アテもなく歩いていた。 すると・・・・・

 ぱぁん、ぱぁん!

「何だい!?」反射的に、ネコミミは顔を上げた。

被っていたフードを払いのけ、耳をすます。そう遠くない何処かから、再び乾いた銃声が聞こえた。
この辺りに集落は皆無・・・・・だからこそ、自分はここに居るのだ。
そして狩人もわざわざこんな辺境の森の奥まで来るとは思えない。
となると。
「誰か戦ってるにせよ・・・行くしか無いさね」
世界は今、荒れに荒れている。しかし、こんな世の中だからと言って、非情になる事など出来はしない。
命の取り合いを見逃すことなど出来ない。彼女は、そういう性格だった。
・・・それに、もしかしたら「ちゆ」かもしれない。彼女がついに、この世界に降りて来たのかもしれない。
だとしたら。 「放っとけない、ねぇ」そう呟いて、全身を覆っていた布を脱ぎ捨て体を軽くする。
そしてネコミミは走り出した。音のした方へ。森の奥深くへと。

一方、ちゆときゅーちゃんは突然現れた17才の攻撃から逃れるべく、森の中を全力で駆けていた。
ちゆが呪文を唱えるには、わずかばかりの集中力と呪文を詠唱する為の時間が必要だった。
しかし、容赦なく次から次へ放たれる銃弾は、詠唱する隙すら与えてくれない。
(攻撃は最大の防御という訳ですか・・・・だけど、何故アイコンがちゆを襲うのでしょう?)
何かが歪んでいる。目には見えないが、確かな奇妙さが有る。
  この世界は「羊羹」に・・・・・あんなに、弱いものに?

いいや、そもそもそれが間違いだとしたら?きゅーちゃんを抱え、走りながら必死に考える。
羊羹には自分がまだ知らない、何らかの要素があるのでは無いか?
ちゆは、羊羹と戦った時の事を思い出してみた。だが、羊羹は「羊羹」でしか無かった。

 ―――そう、敵は本当に「ただの羊羹」だった。
 意志らしきモノを持ち、動く事を除けば。
 その気になれば食べる事も出来る様だし、放っておいても別に無害な存在である気さえする。

          しかし。げに恐ろしきは・・・・
                 (まさか、あれが“汚染”!?)

木々の間を縫うように逃げ惑いながら、ちゆは気付いた。
 この世界は、羊羹に汚染されている。即ち、そこに住む人々もまた・・・汚染されているのでは無いか、と。

あの一見ひ弱そうな、不気味に動く羊羹に。




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