「言葉には力がある。
    例えば、誰かに誉められたり励まされたりしたら嬉しくなるだろう。
        その逆で、けなされたり罵られたりしたら辛くなるだう?
  時に救いとなり、時に残酷な程の威力をもたらす。
                 そんな力を持つ言葉をわし等はこう呼ぶ―――言霊と」

                                   老言霊使い




<第5話 解放されし力 言霊>


ちゆはきゅーちゃんを抱え、森の中を必死に逃げていた。
木々に生えた苔や湿った落ち葉に滑りそうになりながらも走る。
しかし。「!?」木の根と根の間、ちょうどそこに右足を取られてしまった。
(マズイです・・・・これでは向こうに隙を与えたも同然です!!)
ちゆは祈った。この際誰でも良いから―――そう、例えば大食らいで穀潰しのチュンチュンでも良いから、
自分を助けてくれはしないかと。
 無論、17歳がこのチャンスを逃す筈が無かった。
「ちゆタンこれで終わりだよ!(;´Д`)ハァハァ 」
銃口がちゆを捉えた。仕留めた!彼は確信し、引き金を引こうとした・・・・その時!!

 みしっ

突如、衝撃が走った。17歳は何処に攻撃を受けたかまるで分からなかった。
後頭部か・と気付いたのは、既にバランスを崩して顔面から地面に叩き付けられた後だった。
何が起こったのか、全てを見ていたちゆすらも全貌を掴みきれず呆然としていた。
見事な跳び蹴りで17歳の後頭部を蹴り抜いたのは――――
 「ね、ネコミミ!!」思わずちゆは叫んだ。
「ちゆ、大丈夫かい?」「な、何とか・・・・」
木の根と根の間から、右足を引き抜きながら答える。「だいじょうぶ、です」
「そりゃ良かった。間に合ったみたいだね、っと・・・しつこい男だねぇ」
ネコミミの視線の先では、17歳が立ち上がろうとしていた。その顔に焦りの色が見える。
「ど、どうしてお前がここに居るんだよ!」ち、ちち、ち、ちくしょう、畜生、畜生。あとほんの少しだったのに!
焦りのあまり闇雲に発砲する17歳を前に、ネコミミは呟いた。
「アタシにだって色々と事情があるのさ・・・」
電光石火の速さで拳を繰り出し、銃を奪い取る。
(動きが速過ぎて見えない!た、頼もし過ぎます、ネコミミ!!)
「か、返せよ、それは僕のだ!!」僕の大事な力。神になる可能性を秘めた物。
「黙りな。創造主に仇なすたぁね・・・アンタ何考えてんだい」
ネコミミが17歳を一瞥する。耐えかねた様に「五月蠅い!」と叫び17歳が殴りかかってきた。
手にした力を取り戻すべく、彼は躍起になっていた。
(体術でアタシに勝つ気かぃ?無謀だねぇ)
何か変だ。妙に引っかかりを感じる。違和感、と言っても良いかもしれない。

ネコミミは拙い攻撃をかわしながら、どうやって17歳の動きを止めようかは考えていた。
(あぁ、そうだ。ちゆが居るじゃないか)
 閃いた。17歳を本気で殴り飛ばさなくて良い方法。
「ちゆ、アレを使いな!!」
「アレ、ですか?でもアレは、ある意味博打の様なもので・・・」
「良いから早く!」「分かりました!」
きっと何か考えがあるのだろう。この際、そう割り切る事にした。
(駄目で元々ですっ!)ひどく後ろ向きな事を考えながら、
ちゆは「結合を断て!」と杖に短く命じる。
瞬間、眩い光が杖から溢れ出し ―――ちゆに翼が生えた。
そして頭上には金に輝く輪が、
額には創造主の証たる朱き宝珠が、手には魔力の源たる蒼き水晶を携えて。
これが“創造主”たるちゆの本来の姿。そして力の抑制が無くなった今のみ、使える能力がある。
17歳を睨み付け、叫ぶ。


「ちゆは、17歳を 応援していません!!」


刹那、彼は物言わぬ石と化した。




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