「救いなんざ求めちゃならねぇ。
俺達は、とっくの昔に神に見捨てられてんだから。
あるいは戦場の悪魔が嗤う瞬間に、救われてるのかもしれねぇ」
“緑の街”ブルストヴェルク、某居食屋にて。
森の中を急ぐ人影が二つ。
先を行くのはすらりとした長身に緑髪を三つ編みにした碧眼の獣人、
その後ろを歩くのはピンクの髪を二つに分けたブルーの瞳の小さな少女。
白毛の生物を抱きしめ、なおかつ体の前で抱え込むようにして杖を握りしめている。
「な、何でこんなに・・・・・急いでるんですかネコミミ?」
息を切らしながら、少女は前を行く獣人に問いかけた。
ネコミミと呼ばれた獣人は、先を急ぎながら答える。「あぁ、なるべく17歳から離れておきたいのさ」
「どういう事ですか?」少女は困惑気味に、再度たずねた。
「アタシら"13の要"が何で『この世にあらざる力持つ者』って言われてるか、解るかぃ?」
「・・・・文字通り、特殊な力を持っているから・・・・ですか?」少女は単純に考えた。
「ん、正解だねぇ。さっきちゆが使った言霊みたく、各々が色んな力を持ってる訳さ」
「13人それぞれが1つずつ力を?」ちゆと呼ばれた少女は、三度たずねた。
「そぅいうこった。でもって、やっかいな事に"要"の位置を探し出せる力を持った奴が居るのさ」
一瞬考えてからちゆは言った。「それじゃあ、もしそのアイコンが・・・」ネコミミが続ける。
「既に狩られて、帝国の手に渡っているならば」ちゆはともかく、確実に自分達の居場所がばれてしまう。
「・・・・見つかってしまいますねぇ」「いずれ戦うにせよ、それは避けたいだろ?」
「避けたい、ですね。」事態は予想より遙かに複雑で深刻な様だ。
ちゆは ほんの少しだけ、甘く見ていた自分を恥じた。
鬱蒼とした森の中を歩き続けて数時間後、森が開けた。
「っと、見えた!」ネコミミが喜々とした表情を浮かべ、指さしたその先には
「あれは―――――街ですか?」ちゆも思わず、顔が緩む。
「そうさねぇ。緑の街、ブルストヴェルク。もうひと頑張りだ」「きゅう!」
(なんだか、きゅーちゃんは楽してる気がしてならないです・・・・)腕の中のきゅーちゃんを、まじまじと見つめる。
つぶらな瞳でこちらを見つめるきゅーちゃん。駄目だ。可愛過ぎる。
その可愛さに促されるまま、ちゆは再び歩き出した。
ブルストヴェルクは、その通称の通り緑豊かな街だった。
限りなく広大な牧草地と農地。一見して、人よりも家畜の方が多そうな印象を受ける。
のどかだ。あまりにも平和だ。
羊羹が蔓延っている世界であるなどと、悪趣味な嘘ではないかと思える程に。
(この辺りは僻地なのでしょうか?後でネコミミに地図を見せて貰わなくては。)
ふと、ちゆは悲しくなった。自分は本当に、この世界の事を何も知らないのだ。
形状も現状も。ただ創り出したというだけで。
「とりあえず、飯でも食うかねぇ〜」ネコミミが、伸びをしながら言った。
「ん、どした?」ちゆを見て、不穏な表情で首を傾げる。「いぇ、何でもないです」
ちゆは少し無理をして、笑った。
適当に入った居食屋はちゃんと営業しているのか?と疑いたくなるほど、客が少なかった。
一応調理場から音は聞こえているが、片付いてないテーブルや誰かが踏み抜いたままの床などが、
どことなく場末な印象を与える。
「ま、逆に追っ手が来なくて良いかもねぇ」ネコミミは苦笑混じりに呟いた。
隅の席では酔っ払いが昼間っから酒を片手に何か呻いている。
「神は・・・・俺達を・・・見捨てたんだ・・・」
その言葉は、ちゆの胸に重く響いた。